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甘党(悪食?)の大佐の話。

移行その⑦
以下は以前に書いたあとがき的なもの

 

<あとがき>

大佐はこの話をから甘党になってしまいました。
峰あきら様に捧げたものです。

砂糖ぐらい、発注しないで地元で買ってあげればいいのに。
もしかしてわざとなのか!?そうなのか!?

多分そうなんでしょう。ちなみに大佐は1週間後ぐらいに気づくのではないかと・・・
糖尿病に関しては、藍原の行っていた大学の学科では糖尿病のことを学んだりもします。

どんな所で知識がいかされるか分からないものですね(笑

(2004.1.23)
(2010.5 移行)


午後の光が差し込む東方司令部執務室。

そこで一人の男が、部下から一通の書類を渡されていた。

彼はその書類に目を通し終わると、目の前に立つ部下に質問をした。

 

 

「・・・一体どういう事かね?ホークアイ中尉。」

 

 

彼の名前はロイ・マスタング。
29才という若さで国軍大佐の地位を得て、このイーストシティ東方司令部の司令官を任されている。
また、国家錬金術師の資格を有していて、二つ名を“焔の錬金術師”という。

一方、彼の前に立つ女性。彼女の名前はリザ・ホークアイ。彼女はロイと共に内乱を戦ってきており、
極めて優秀な彼の腹心の部下である。

その彼女から渡された書類をロイはもう一度眺めると、今度は具体的に質問をした。

 

 

 

「これは先週行われた健康診断の結果だが、この再検査とはどういう事かね?」

「見ての通りです、大佐。空腹時血糖値および75gブドウ糖経口負荷試験(OGTT)2時間値の結果が
それぞれ119mg/dl、160mg/dlを示しております。これは正常値よりも高い数値を示していて、
前回より急激な上昇をしています。 ですから、2週間前後に再検査を行うとの事です。」

 

 

彼女は、明確な答を返した。

 

 

 

 

東方司令部では年に2回、軍の仕事の関係上8月と2月に健康診断が行われる。

8月は暑さによる夏バテ、熱中症の予防や治療の為に。2月は新規入隊者の事前診断として。

ちなみにこの時には現役軍人も一緒に診断をし、問題が見受けられれば再検査を行い、ものに
よっては退役させられる場合もある。どちらの健康診断も1週間ぐらいで結果が出る。中尉から
渡されたロイの健康診断の結果は、確かに血糖値(BS)とOGTT値が高かった。

 

しかし―

 

 

「今回だけ、たまたまだろう?先々週辺りは忙しく、しっかりと食事も摂れていなかったし。この値も
正常値より少し高いだけみたいなのだから、何もそこまで気にする必要はないのではないかね?」

 

 

彼はそう言うと持っていた書類を机に置いた。

今月初旬は、人民解放軍とやらのテロ予告に振り回されたり、なにもこんな時期に来なくても
いいだろうと嘆きたくなるような軍のお偉いさんの視察などで、彼を含め主立った将校達は
寝る間も惜しんで働く羽目になっていた。

それが健康診断をおこなう辺りでやっと落ち着いてきて、ここ最近は平和そのものである。
その為ロイは、適度に仕事をさぼりつつ女性とのデートを楽しんでいた。
だが再検査が入るとなるとその分の仕事が前倒し、もしくは先送りになるのは目に見えて、
せっかく空けられた(勝手に空けた)楽しい一時が潰されてしまう恐れもある。

たかが一時的な体調の変化で、大事な時間を奪われたくない彼はそう考えていた。



数秒後に発せられる彼女の言葉を聞くまでは・・・

 

 

「・・・医療部からは、この値は境界型ではありますが悪化すると『糖尿病』になる可能性もあると
報告を受けていますが・・・いいのですか?」

「「「糖尿?!」」」

「なっ?!」

 

 

言われた本人よりも早くその場にいたハボック、ファルマン、フュリーがその言葉に反応した。

ロイは軽く舌打ちすると、部下達を一喝する。

 

 

「ハボック少尉、ファルマン准尉、フュリー曹長。何をしている、さっさと仕事に戻りたまえ。」

 

 

そうは言っても、今の言葉が聞こえてしまえば後の祭りである。

彼の言葉に素直に従う部下一人、静観する部下一人、絡んでくる部下一人である。
案の定、絡んでくる部下=ハボックがこちらにやってきた。

顔は非常に神妙な面持ちだが、明らかに目は笑っている。そのまま彼はロイの机に寄りかかり、
これまた神妙な声でロイにお悔やみを申し上げた。

 

 

「大佐。短いお付き合いでしたが、余生は大事にしてくださ、うわっっ!」

 

 

ロイは立ち上がると、机に半分のっかているハボックをはり倒し再び椅子に座り直す。

ついでに眉間のしわを一本増やして腕を組む。

 

 

「私の机に座るな、うっとおしい。それにまだ再検査の通知をもらっただけであって、
私は断じて糖尿病なんかではない!」

 

 

こう高らかに宣言する。

若干29才で大佐までにのし上がった自分が、この若さで現役を退き糖尿病という慢性的な疾病と
今後、一生付き合うなんてあり得ないことである。

それに糖尿病などになってしまったら、女性とも気軽に食事に行けなくなってしまう。

そう考えるロイであったが、

 

 

「しかしですよ、大佐の食生活を見ているとかなり疑わしいじゃないですか。それに大佐は再検査を
受けないって言うし。もし本当に病気だったらえらいことになるんじゃないですか?」

 

と、彼に言われてしまった。

彼の言うことはもっともである。万が一にでも病気の可能性があるのなら、その病気は早期治療を
した方が後々の生活にとっていいことぐらい知っている。

けれども万が一のことに時間を取られたくない彼は、再検査というものにいまいち行こうと思えない。
そのためついつい子供の言い逃れのような返事をしてしまった。

 

 

 

「さ、再検査はともかく・・・糖尿の原因になるようなことなんてしてない。」

「本当ですか?全く、全然、本当に何もしていないって言えますか?」

「・・・・・していないさ。」

「へぇ~そうですか。大佐は自覚がないと。」

「じ、自覚も何も私は至って健康的な生活を送っているよ。」

 

 

ハボックはその言葉を聞くと片まゆをつり上げた。そして笑いで口元がゆるむのを手で隠すと、
ロイにとっての急所に決定打を与えた。

 

 「では、大佐。今後のコーヒーには砂糖は入れないでくださいよ。
砂糖の入れすぎは健康に悪いですからねぇ~。」

 

「?!」

 

いきなりの条件の提示、しかもその内容に彼は慌てた。

彼はコーヒー、紅茶はもちろん、甘いはずのココアにまで砂糖を入れるという、この司令部で1,2を
争う甘党である。なので彼にとってコーヒーに砂糖を入れないということは、料理に味付けをしない
のと同じようなことであった。

 

 「どうして私がそんなことをしなければならない!」

「大佐。貴方が1日にどれくらい砂糖を摂取しているか分かっていますか?1回のコーヒーに付き
スティックシュガー(6g)を5本ですよ!?それを何回飲んでいるんですか?こんなんが健康に
いいわけ無いじゃないですか。あんな数値が出た原因は絶対にこれです。だから、今後はブラックで
飲んで下さい。ってゆーか、健康的な生活を送っているなら出来ますよね?もちろん。
そうしたら、経理課が泣いて喜びそうだ。」

「うぅ・・・」

 

普段ならハボックの言葉など一蹴するロイだったが焦りの為か、いい返し言葉が見つからない。

しかも相手は皮肉も込めた正論を使っている。完璧に分が悪かった。何か言わないと、と思い、
さらに焦るロイの前にすっと湯気立つカップが置かれた。

 

 

「どうぞ。」

 

 

いつのまにか部屋からいなくなっていたホークアイがコーヒーを持ってきており、部屋にいた人に
配っていた。すると部屋にはコーヒーの香りがほのかに充満し、少し落ち着いた雰囲気が漂う。

彼女からコーヒーを受け取った人々は口々にお礼を述べ各々飲み始めたが、ロイだけはコーヒーを
眺めたまま固まっていた。

 

 

「中尉。」

「なんでしょう。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・中尉、いつものは・・」

「やはり再検査は受けるべきだと思い、先ほど提出してきました。それにより日時が決まりまして、
来週になったそうです。ですから再検査が近いので、一応、糖分の摂取は控えて下さい。」

 

 

優秀な彼女の行動と言葉は、本当にロイのことを思ってとられている。

それは、周りも彼自身も分かることだがしかし、先ほどのハボックとのやり取りから考えると、
ここで素直に飲んだら負けを認めることになる。

それは何となく許せないため、ロイはもう少し抵抗した。

 

 

「中尉・・・」

「控えて下さい。」

「・・・苦いのは」

「駄目ですよ。」

「・・・・・・・。」

 

まだ飲めずにいるロイを見ていたハボックだったが、その子供じみた仕草に思わず吹き出した。

 

 

「大佐、30にもなってそりゃないでしょーが!」

「30じゃない!まだ20代だ。」

 

半分やけくそで言葉を返したロイだったが、この状況が改善されることは一向になさそうである。
かといって自分で砂糖を取りに行こうとしても、目の前の部下達に止められるであろう。
我慢して飲むか、拒否するべきか・・・




 

しかしながら残酷にも散々悩んだ結末の行方は彼女に一言で決まった。

 

 

 

 

「大佐。私としましては、糖尿病の上司はちょっと・・・。」

 

 




 

 

完敗だった。ロイは仕方なくコーヒーカップを手に取り一口、口にしたが・・・

 

(・・・苦い)

 

いつもの甘さに慣れているため、舌に残る苦さが眉をひそめさせる。

 

 

「・・・せめてミルクを入れてくれないか。それと、しばらく私の前で砂糖は使わないように各人に
連絡をしておいてくれ。」

「かしこまりました。」

 

 

 

 

彼は再検査までの1週間、ミルク入りノンシュガーコーヒーを我慢して飲み続けた。
そして再検査をおこない、その3日後・・・

 

 

「血糖値はどちらも正常値に下がっていますねぇ。マスタング大佐、健康診断の近くで大量に糖類を
摂取しませんでしたか?」

「大量の?・・・あぁ、確かバレンタインデーが近かったので女性からチョコレートをもらっていて、
それをお昼代わりに・・・」

 「お昼・・おほんっ。・・・なるほど。この間の数値の理由はそれでしょう。
今回は何もありませんでしたが次回からは気をつけて下さいよ。」

 

 

 

 

 

医務室から出たロイは軽やかに執務室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ見ろ!糖尿病では無かっただろう。大体、今までと変わらずにあの量の砂糖を摂取いていて
今回だけ数値が上がるなんておかしいと思ったんだ。」

 

 

 

高々に笑う上司の背中をぼんやりと見ていたハボックは、口元から煙草を離すと今回の原因が
なんだったのか聞いてみた。

すると、

 

 

「あぁ、あの時はバレンタインが近かったから女性から沢山チョコレートを貰っていて、それを
お昼代わりに食べ続けていたかららしい。ま、モテる男は大変ってことだな。はははははー。」

 

 

(・・・チョコをお昼に。・・・うぇ~)

 

 

奇妙な顔をしている部下をよそに、病気ではなかった事に喜びを感じているロイだった。

すると彼の机に、ホークアイ中尉がいつものようにコーヒーを置く。

 

 

「よかったですね。」

「あぁ、ありがとう。」

 

 

彼はコーヒーを受け取ったが、それは最近飲み続けていたコーヒーとミルクだけ。

 

 

「・・・中尉。砂糖を入れたいのだが。」

「ありません。」

「え?」

「大佐が砂糖禁止令を出したので、コーヒー用の砂糖は発注しておりません。しかも在庫は全て
食堂のメニュー使用して頂きました。ですから仮に今日発注しても、列車を乗り継いでここに届くのは
約1ヶ月後です。」

「・・・す、すると・・」

「はい。砂糖が届くまで、またミルクとコーヒーでお願いします。」

「・・・・・・。」

 

 

 

 

こうして彼は更に1ヶ月、砂糖断ちをすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・おわり?

 

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