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移行したもの。

ツタエゴトその3。


    ―ツタエゴト―



 3








  その夜の夢には続きがあった。




 辺りを見回すと薄暗くはっきりとは分からなかったが、いつもの如くどうやらそこは見慣れた
セントラルの一画であり、彼女は息を飲んだ。


   (また此処なのね。そして、あの光は・・・・・・電話ボックス)


 彼女がその光の正体を認識した途端、周りの暗闇は一瞬にして消え去り、
彼女の目の前には所々を緋色の何かで緋く染められた電話ボックスが佇んでいた。
 何度観ても慣れない光景だったが彼女は意を決し、恐る恐る目線を下に降ろして流れる液体
の先を、ソレが流れ出る先を見つめると――――






   そこには






   何もなかった。







   (・・・・え?)


 彼女は瞬きをした。しかし目の前には緋色の海と電話ボックスだけ。
そこに彼が倒れていると思っていた彼女は呆気にとられた。


   (どういうこと・・・ここはあそこじゃないの?)


 周囲を見渡しても、そこはあの場所である。間違えるはずはない。
しかし、この場所にこの状況で彼が此処に居ないのはおかしい。

 その時、後ろから声が聞こえた。


グレイシア


 彼女は後ろを振り返る。そこには・・・・・


「・・・あ、あなた・・」



彼がいた。



彼女の夫、マース・ヒューズは彼女の名前を呼び、いつものように微笑む。
彼女は瞳に涙を浮かべると、そのまま彼の所へ駆け出し彼に抱きついた。

「逢いたかったわ。」


 彼は優しく彼女を抱きしめ、自分の腕の中で泣いている彼女をそっと包み込む。
彼女の涙は止まることなく流れ続け彼の服にしがみつくとそのまま動くことが出来なかった。
そんな彼女を一層優しく抱きしめると、彼は言葉を紡いだ。


グレイシア
「あなた。」

すまない
「いいのよ。」

すまない
「・・あなた」

俺は非道い奴だ
「そんなこと・・」


そんなことはない!と、言おうとした彼女の口を、彼は優しいキスで遮る。
そして口付けが終わり彼女を見つめる瞳は光を宿しており、

それは軍人マース・ヒューズの瞳だった。



少し寂しげに、彼は瞳を伏せてはいたが・・・。


なぜなら・・・


彼は彼女が呼んだから現れたのではなく、彼が呼んだから彼女が此処にこれたことと、
そして、彼女と娘が自分に逢いたがっているのにそれには出ていかず、友を助けるために
彼女を自分の前に呼んだことを知っているから…

しかし、そうだとしてもそれを怒る彼女ではない。


「そうだとしても、私の前に現れてくれたのは嬉しいわ。」

グレイシア

その言葉を聴いて彼は泣きそうな笑みを浮かべると、彼は頷き、光を宿した軍人の瞳で
彼女を見つめた。

頼みたいことがあるんだ。

「?」

あいつは人体錬成をして俺を蘇らせるつもりだ。

「!?」

だからあいつを止めてやってくれないか?

「・・・」

・・・

「・・・・・・」


 彼女は彼を見つめた。彼も彼女を見つめる。

そのまま時が止まってしまったかのように動かない二人。
彼女の瞳には、再び涙があふれてくる。彼女は彼を見つめて・・・微笑んだ。


「えぇ、分かったわ。」

すまない。

「いいのよ、あなた。私は貴方を愛していた。貴方も私を愛していた。

だから私には分かるの。

貴方は愛したものを死んでも守る人だってことを。その遺志を今度は私にも継がせて。
貴方はもう居ないけど、あなたの 愛したものは私が守っていくわ。」

グレイシア・・

「だから・・・安心して、ね?」



 彼女から涙が溢れ出す。それでも彼女は微笑みを崩さない。
その顔は美しく、彼が最も愛した人の顔だった。
彼は彼女の頬にそっと手を当て、泣いた様に微笑むと――
グレイシア

彼は彼女を抱きしめた。


愛してる
「えぇ・・」

彼女もまた抱きしめる。
強く強く・・・・再び、離れてしまうことがない位に。

「私もよ。」


重なり合う二つの影は二人の心を表していた。
決して離れはしないと…




けれど二人は



これが最後だと分かっていたから・・・



あいしてる

「さようなら」





────別れを選んだ。








 眼が覚めて起き上がると、時計は七時を指していた。
彼女はベッドから降り立つと頬を流れていた涙を拭う。今まで見てきた夢の意味が、
今の彼女には分かっていた。自分がこれからすべきことも。




今の彼女の瞳には、彼と同じ光が宿っていた。








続く?

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