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移行その⑭
以下は以前に書いたあとがき的なもの
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更新第5弾。(拍手も含まれております(笑))
藍原さんの今の状況を表している一作品。
ロイアイとかの意識はありません。なんとなく、軍部で書いたらこうなりました。
こんなのもありかなって。
この大佐は甘い物好きシリーズの大佐とは別人ですので、あしからず。
ちなみに、藍原さんはミルクティーは飲めませんが、ロイヤルミルクティーは飲めます。
同じじゃないんです!
本文中の説明は捏造ですが(おいっ!)、その2つは全く違う物であるという主張は譲れません!
(2006.10.16)
(2010.5 移行)
ロイヤルミルクティー
ここ数日続いていた残業にも終わりが見え、久しぶりに定時であがれるように
帰り支度をしていると、仕事というのはやってくるもので。
持って来ざるをえなかった部下には悪いが、不機嫌になるのも致し方ないだろう。
+++
「・・・はぁ。」
数時間前から何度吐いたか分からないため息をつく。
定時の時間はとうに過ぎ、窓の外には少し欠けた銀盤が天高く昇って輝き、
執務室の中を照らしている。
予想以上に多かった仕事は、残業どころかこのまま宿泊コースに変わりそうであって
その事実がため息を増やし、また作業スピードを停滞させている要因になっている。
そもそも自分はデスクワークは苦手である。
同僚には、少ない量のうちにさっさと終わらせれば苦労しないとのだが、次の日でも出来る
仕事を今日行うという行為が、何となくその日を無駄に消費しているようで好きになれない。
部下からは、己の力に少し自信を持ちすぎてると諌められたが・・・
こればかりは自分の性質上仕方がない。
気が付くと指の間でくるくるとペンを回している自分。
さっきから仕事が進んでいない事がよく分かってしまう。
ふと、視線を上げると、この仕事の所為で自分と同様に残業をする羽目になった他の部下達の
自分に向けられた白い目と目線が合ってしまった。
さすがに少し居たたまれなくなったので、首を竦めると再び仕事に意識を向けた。
+++
それから2時間後。
なんとか一段落したので提出する書類にサインと印を押すと、有能な部下にそれを手渡す。
そうして今まで座っていた肘掛け椅子の背もたれに、全身をゆだねる。
結局今日は家に帰ることが出来なかった。
なぜなら今から帰っても、シャワーを浴びて3時間寝たらまた出勤しなくてはならないからで。
それなら司令部の仮眠室で睡眠を取った方が家と仕事先の往復分の時間も当てられるだろう、
という考えからである。決して寝心地の良いわけではない仮眠室のベットだが、今の体には
睡眠が必要なためそこは妥協するしかない。
そう考え、仮眠室に向かおうと椅子から離れそうもない重い腰を上げようとした時、
執務室の扉が開き、部下のホークアイ中尉とそれと共に柔らかい香りが入ってきた。
「お疲れ様です、大佐。仮眠室でお休みになれる前にどうぞ。」
そう言って彼女が机に置いたのは一杯のティーカップ。
香りからすると紅茶の様だが、ミルクが入っているため紅茶独特の透き通る紅ではなく
淡いキャラメル色をしていた。
どうやらミルクティーのようである。
「ありがとう、中尉。」
普段はあまり口にしない物であるが、先程の香りと暖かそうな湯気に心が動かされた。
お礼を言って一口口に含むと、紅茶の香りとミルクの心地良い温かさが疲れた体に浸透し、
酷使した目や腕、肩の疲労を柔らかく癒す。
見た目は普通のミルクティーなのに、味は今まで飲んだものより数段美味しかった。
「・・・うまいな。」
「ロイヤルミルクティーです。」
ロイヤルミルクティー・・・なんとなく聞いたことがある名前だ。
「通常のミルクティーはお湯で抽出した紅茶にミルクを入れますが、これは暖めたミルクで
紅茶を煮出します。そうすることで、ミルクの栄養や暖めたミルクの疲労回復効果を
高めることが出来ます。」
「ほう・・・疲労回復にねぇ。」
「えぇ。ですから、今日のように疲れた時やわずかな時間でも睡眠をとり、疲労回復させたい時
などにはおすすめしています。」
「そうか。」
「今日はあまりお休みできませんが、少しでも楽になればと思いまして。」
そう言って、彼女は微笑む。
その微笑みを見た時、暖かく柔らかい何かに包まれた気がした。
+++
その後に彼は、仕事の後には必ずロイヤルミルクティーを飲むようにしている。
ロイヤルミルクティーとあの時の彼女の微笑み。
それらが、今の彼の疲れを癒すからである。
終