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 移行その④
以下は以前書いたあとがき的なもの

 <あとがき>

実はこれ、水稀さまという方に一度捧げたことがあるのです。
が、現在は連絡が取れずにいるのでどうなったのか解らず仕舞い。
アニハガで大佐の過去(イシュバールで子どもと対峙)を見た後に、むくむくと
精神的に駄目な大佐像が藍原の中に生まれたんだと思います。
そういえば、原作ではずいぶん後になって知るんですよね。
っていうか、科白が原作と被っている(汗)
「説明しろー!!」とか・・・
本誌発売前な作品なので勘弁してください。
にしても、ヒューズさんのセリフがいまいちだ・・・
もっと、かっこいい科白を吐かせてあげたかった。
(2004.1)
(2010.5 移行)
(2010.5.8 ちょっとだけ修正、全部は気力なし)


  緋色の暗示―

 

何度受話器を手にしては、元に戻しただろう。

今の自分が理性というものに縛られていないことは、十分に承知している。

だから、あの少年から今は距離を置かなければならない・・・。

 

 

 

人が人である定義はいくつかあるが、その一つに欲が関係している。

『人は渇望する生き物である。』とはよく言ったものだ。人の欲が尽きることはない。

人は欲望無しでは生きられない。『生きたい。』と思うことでさえ欲になるのだから。

 

 

六年前、初めて人を殺めてから血の色と臭いに出会うたび、押さえきれない欲が内側から自分を
突き動かすようになった性欲と破壊願望。
それは自分が執着しているものに対して、特に強く動かされる。
普段は表に出てこないもしくは適度に発散されている欲が、一度に押し寄せてくる理由。


人から流れ出す緋色は、ロイに一種の暗示を掛けた。

血を見るとその欲望の声から逃れられなくなる。現場でそれを見るたびに、理性を総動員させて
抑えたり友人の手を借りたりしていたが、今回の場合は今まで以上にひどい。

 


「理由は・・・分かっている・・・。」

 

理由は解っている。今回キッカケになった現場の血と、今のロイが置かれている状況に問題がある。
現場の血は彼のよく知る人物のものだったこと。そして彼は今、一人の人物に深く執着している事・・・。

 

六年前からは、女性とお付き合いをしてもなるべく執着しないようにしてきた。彼女たちを傷つけたくは
なっかたし、住む世界が違うことも分かっていたから・・・。
しかし、三年前に自分と同じ世界に住む少年と出逢ってしまった事で執着するという感情が再び蘇り、
そして発動のキッカケになった緋色は、今まで手を貸してくれた親友ともいえる友人の血。

 

抑えてくれる人物が居なくなった今、ロイの中では一つの欲望が渦巻いていた。





 

彼ヲ犯シ、壊シタイ・・・。

 


「・・・なぜだ。」

 


何故、そんなことをしなければならない。密かな想い人を苦しめるようなことを・・・。

自分には、やらなければならない事がある。上へ昇りつめること。友人の敵を討つこと。
だが彼は今、その現実に縛っていてくれる理性が解き放たれてしまっている。この欲望がいつまで
続くか分からない。だから彼とは距離を置かなければならないのに・・・。

 



 

もしこのままの状態で、彼に会ったらどうなるか・・・・・考えたくもない。
 

自分の欲望によって想い人が壊される。その響きが与える快感と不快感。

言葉を交わしたら、逢いたい衝動を抑えられない。逢ってしまったら、渦巻く衝動を抑えられない。
自分の友人とも仲の良かった彼にその友人の死を知らせたかったが、自分に渦巻く衝動の為に
伝えられずにいた。

 

 



   +++


 

 


何度も受話器を手にしては、連絡できず元に戻す。

深夜の東方司令部執務室で彼は一人苦悩を抱えていた。

彼の部下はほとんどが夕方までに帰ったため司令部には警備兵と夜勤の者しかおらず、
執務室は静かで夜の濃密さが拡がっている。

ロイは自分の椅子に深く腰を埋めると、重いため息を吐いた。

 


「アイツが死んで四日も経つのに、私は・・・。」

 


死んでしまってから四日も経つのに、二日前に見た彼の緋色と臭いに囚われ、動けないでいる。

早く知らせなければならない。

その為には衝動を抑えなくてはならない。

しかし、抑えてくれる友人はいない・・・。

これほどまでに気持ちが急かされ、また歯がゆい思いをロイはしたことが無く、一人呟いていた。

 

「私は・・・一体何をやっているんだ・・・。」
「本当にな。」

 


ありえない返答を聞き、ロイは愕然とした。

冷たく無機質に放たれた言葉も、それを放った人物もここにいるはずがない。・・・だが、確かに
はっきりとした少年の声が部屋の入り口から聞こえた。

ロイはゆっくりと顔を上げ入り口を見ると、ドアの前に紅いコートを着たエドワードが立っていた。

 

「・・・鋼の、な、何故・・・」
「あんた、本当に何やってんだよ!」

 

エドワードは入り口からロイの前までやってくると、座っている彼の胸ぐらを掴み上げた。見ると、
彼の瞳には黄金色の焔が宿っている。エドワードは焔の如く怒りに震えていた。

 


「なんで連絡してこない。中佐が死んで四日も経つのに・・・。
 一体どういう事なのか説明しろ、大佐!!」

 


エドワ-ドが力を緩めようとしない為、座っていたロイは吊されるような体勢になる。だから彼は、
自分を掴んでいる手を押えると苦しげに抗議した。

 


「離してくれ、鋼の。」
「あんたがちゃんと説明してくれるならな。」

 


その声には有無を言わせぬ強さがあり、彼の死を知らせなかったロイに対する怒りと、自分が
それを今まで知らなかったことに対する苛立ちも含まれているようであった。

 



 

エドワードは彼が話し始めるまで離すつもりは無いらしく、しばらくこの状態が続く。

圧倒的に自分に非があるロイは、彼の鋭い目線に耐えられず目をそらしうつむいたが、状況が変わる
わけではない。だからといって理由を話そうと意識を変えれば、今は抑えられている衝動を
もう止められなくなるだろう・・・。

ただでさえいるはずの無い彼が自分の目の前にいることで刺激され、動揺している自分は
些細なことで抑制が効かなくなる。ロイは慎重に言葉を選び、伝えなくてはならない。

しかしロイの行動とは裏腹に、何も知らず怒っているエドワードは言葉を選ばなかった。

 


「・・・なんで何も言わないんだ。俺なんかにはもう話す言葉もないのか。」

 


チガウ!
 

 

・・・彼の言葉に否定をする自分がいる。だがそれはエドワードには届かない。

心臓から発せられている言葉は喉までは進むのに、もどかしくらいに声にならない。

 







 

ヤメテクレ、君ヲ壊シタクナイ・・・。

 


 

その想いも伝わることはない。

 

 









 

そして―

 

 

 

 

「あんたにとって俺は、中佐が死んでしまってもそのことを伝える必要が無い程度の奴なのかよ。
 それとも所詮、自分以外は上へ昇るための道具なのか。」

 

 
 

 



 

その言葉を耳にした瞬間、ロイの中で抑えられていたものが解放された。








 

彼はエドワードの両手首を掴むとそのまま立ち上がり、エドワードを押し倒すと、


そのまま彼を組み敷き、


右手でエドワードの首を締めつけた。

 

 

「・・っぐ、な、にを・・・」
「何も知らないくせに・・・私の気持ちも、何もかも。」

 


手の力は緩まない。

もう止められなかった。

一方の手で手首を押え、もう一方の手をエドワードの首に掛けたままでロイは、

彼の耳元でささやいた。

 

 

「あいつから流れた血を見て以来、私はずっと戦っていた。六年前から血を見ると湧き上がってくる
 欲望に対して。あいつのことを伝えなくてはと何度も思ったが、会えばこうなると分かっていたし、
 君を傷つけたくなかったから・・・必死で抑えて、そして早く連絡しようとした。
 だがそれも無駄に終わったようだ。抑えてくれていたあいつが居なく、目の前には君がいる。
 もう私自身では止められない。それとも、今度は君が止めてくれるかい?・・どちらにしろ
 到るところは一緒だけれどね。」

 

 
 

 

ロイは嘲笑っていた。それが自分になのか相手になのかは分からない。




 

「ヤメロ」という心の声も遠くなっていく。

更にに手に力を込めて苦しさにもがくエドワードを見つめると、手首を押えていた自身の左手を
エドワードの頬に持ってゆく。

 

 

「岩をも砕く鋼でさえも、灼熱の焔によって溶かされる。

 さぁ、君が私の前で崩れる様を見せてもらおうか。」

 

 

 

そう言ったロイはうっすらと嘲笑を浮かべ、彼の手がエドワードの頬に触れた瞬間――。

 

 





 

 

何かが聞こえた。

 

 













    +++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロイは右手の甲に水の冷たさを感じ、手を止めた。はじめはそれがなんなのか分からなかった。

・・・しばらくしてそれが頬を伝って流れていることに気づく。

自分に組み敷かれているエドワードが先ほどからこちらの顔を見つめている。

ゆっくりと自分の頬と瞳に手をあててみると、ロイは自分が泣いていることに気が付く。

最後に涙を流したのは、友人の墓前。
その後、彼の血を見たことで欲望に捕らわれ、彼の死が心の奥底へ仕舞われてから流していない。

 


「なぜ・・・こんな・・・」

 


涙など出るのだろう。自分は今、解き放ってしまった欲望に埋もれたはずなのに。

そして、このまま欲望の海に沈んで逝くだろうと思ったのに。

 


いつのまにか渦巻く欲望は消えていた。

その代わり、止めど無く涙が溢れ出ていた。
 

身体に力が入らない。

手は顔から離せずにいて、膝立ちのまま呆然としている。

 
 

そのロイの拘束から逃れたエドワードは立ち上がると、ロイの目線まで顔を下げてから
ロイの肩に手を掛けて、彼に問いかけた。

 


「『“抑え・発散”をいつか“乗り越え・進む”にしろよ。』って中佐に言われたのか?」

「・・・え?」

「いや、さっき大佐の手の力が弱まったから起き上がって、顔を見たら大佐泣いてて、
 その時に呟いていたから・・・」

 


エドワードも状況が良く分からずしどろもどろに話したが、
彼が言っていた言葉はロイが以前何度も聞いたことがある言葉。

血を見て沸き起こる欲望の一つを解消するために、ロイは六年前の出来事を知る友人・ヒューズの
身体を借り、その都度抑えるかもしくは発散していた。

そして、それが終わるたびに自分がしたことに対し深く後悔をするロイに、やさしく告げる言葉だった。

 

 

 

 -*-*-*-

 


『・・すまない。』

『なぁに、いいっていいって。お前は気にしすぎ。大体俺から持ちかけたんだからさ。
それよりも、ロイ。今は無理でもよ、いつかは乗り越えないとだぞ。』

『・・・あぁ、わかっている。』

『本当かよって、ほらほら、また深く気にして・・。打倒“抑え・発散”、目標“乗り越え・進む”だろ?』

 


 -*-*-*-

 

 

 

そう言っていた彼の笑顔が思い出され、また涙が落ちる。

自分はあんなにも彼に助けてもらっていた。

彼に支えられていた。

それなのに・・・自分はただ甘えていただけで、彼のことも彼の言葉も先ほどまで

心の奥底に仕舞われていた。

 





 


・・・これでは駄目だ。

 

 





変わらなくてはならない、自分一人で立てるように。

 

 




 


そう思うロイの漆黒の瞳には、徐々に光が宿っていく。

 

しばらく、彼を見つめていたエドワードは、

それを確認すると自身の上体を起こし、床に座り込んでいるロイに手を差し伸べた。



「とりあえず・・・立てよ。」
 

そう言われて差し出された彼の手を取り、立ちあがったロイの顔には先ほどの狂気は消えていて。

彼はしっかりと目の前のエドワードを見据えて謝罪をした。

 

「鋼の。・・・その、すまなかった。」
「あ?」
「それと、ありがとう。」


 

滅多に聞けない人物からの謝罪の言葉に束の間目を見開いたエドワードであるが、

何を思いついたのか、口元をニィと上げてこう切り出した。




「良くわからねーけどま、詳しくは列車の中で聞かせてもらうから。」
「・・・列車?」

 

いきなりの発言に思わず眉を寄せる。

列車と言うことは、何処かへ行くというのだろうか?

 


「あぁ、中佐の墓参り。もちろん一緒に行くよな。そこで、話を聞かせてもらう。」

「なるほど・・・ふむ、そうだな。」

 

 

 

彼、エドワードには事情を説明しなければならないし、あいつの墓には葬儀の後行っていない。

先程あいつには死んでからも世話になってしまったし、礼ぐらいしに行かねばならないな。

ロイはそう考え納得する。




ではそのために、仕事を調整して・・・などと考えていると、彼の前にいたエドワードが腕を引っ張る。

 

「何してんだよ、大佐。早く行くぞ。」
「え?ちょ、ちょっと待ってくれ、鋼の。まさか今から行くのか?」
「あたりまえだろ。もうすぐ始発は動く時間だし、俺は早く聞きたいし、中佐だって・・墓ん中で
 待ちくたびれてるぜ。だから、今から行く。」
「しかし、私は夜勤で寝てないし、その次の日は仕事が・・・」

 

そう言うロイに対しエドワードはにっこり笑顔で、

 

 

「さっきの、俺をどうにかしようとしたことと等価交換ってことで、いいよな?」

「あ・・・・・・はい。」

 

 

ロイは了承するしかなく、すごすごと出る支度をする。

彼の準備を待っていたエドワードだったが急に思い立ったらしく、

 

「あ、俺アルに連絡してくるから、大佐は先に駅に行ってて。じゃっ。」
「ちょ、鋼の!」

 

言い終わらないうちにエドワードはドアを開けて出て行く。

彼の背中を見送ったロイだったが、コートを羽織りドアを開ける。

 

 

「ま、いいか。」

 

 


と、思いつつ部屋から出ていった。

 

 

 

 

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