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ストロベリームーンを見た2人は激しい恋に落ちる。

そんな月夜の伝説がこのアメストリスの世界にあったとしたら、

そこにいる彼等はどんなことを思うのだろうか。

  

 Ⅰ Side:L

 Ⅱ Side:J

 Ⅲ Side:R

 Ⅳ Side:E



【注意】
これは赤石路代先生が描かれたストロベリームーンの設定が鋼の世界にあったとしたら・・・
と、いう妄想から派生したお話です。

ストロベリームーン

 

 

 

Side:R

 

 

 

 

P.M.1:30

 

和やかな空気が漂う東方司令部の食堂。

お昼のピークが過ぎて、空席が目立つようになってきている。

彼女は職場の友人2人と少し遅めのランチを摂っていた。

 

 

部署が全然違うので、なかなか会えない友人たちとこうして食事が出来るのは

実に3ヶ月ぶりである。

仕事の関係上、彼女達がいる職場は女性の人数が圧倒的に少ない。

その為か、勤務時にはめったに顔を合わせない彼女達が、色々と情報交換をして

交流を深めていくのに、そう時間は掛からなかった。

 

 

 

       +++

 

 

 

久し振りに会ってまず行うことはお互いの近況報告。

時事的な事から始まって上司の愚痴、仕事の愚痴、同僚の恋の話、最近の私生活、

街の噂、軍内部の噂、はたまた仕事上で知り得た秘密など・・・

いくら軍に所属しているからといって、ある意味女性の本質である情報収集という

井戸端会議が無くなることはない。

多少の個人差はあるにしろ、れっきとした女性である彼女=リザ・ホークアイも

その活動に多かれ少なかれ参加していた。

仕事に関してはとても優秀な彼女だが、彼女のすべき事は1人では賄えない時もある。

そんなとき、この女性だけの情報網は役に立つのであった。

 

 

もちろん彼女自身も、報酬として情報をくれた彼女たちに自分の知り得る話を提供する。

普段忙しくてなかなか休みが取れない彼女でもそのようなやり取りが出来るのは、

彼女の上司に関することが友人達に提供する情報として極上の部類に入り、皆それを

聞きたがっているからで、その為に特に協力的になってくれるひともいる。

 

自分と友人が行なっている大げさに言えば一種の情報の売買行為に、彼女はたまに多少の

不快感や罪悪感を感じることがあるが、結果として彼女たちの情報が自分や自分の上司に

役立つのであれば、彼女はそれらの感情を抑えることが出来た。

上司達の言葉を使うと『等価交換』と言うことになるのであろう。

彼女は自分自身にそう言い聞かせている。

 

 

 

普段からポーカーフェイスである彼女は、ここでも変わらない。友人達も特に気にする

様子もなく話を始める。経理課の大尉がムカツクだの憲兵の新人がカワイイだの・・・

器に盛られたサラダを突きつつ友人達の話を聞いていたが、その時目の前に座っていた

1人が聞き慣れない単語を口にした。

 

 

「でさぁ~彼女ってば先月、例の彼とついに見たらしいわよ、あれ。」

 

「え~まじ?!あれってまさか・・・」

 

「そう、ストロベリームーンよ、ストロベリームーン!!」

 

「で、効果はどうだったって?」

 

「それがバッチリだって。噂は本当だったんだぁ・・・いいなぁ~」

 

 

・・・・・?

(ストロベリームーン?何かしら?お菓子じゃなさそうねぇ?)

聞き覚えのない単語聞いた彼女は、すぐさまその単語の示す意味を聞いてみた。

 

 

「ストロベリームーンって何?」

 

 

彼女が尋ねると、すぐ目の前に座っていた友人が答えてくれた。

 

 

「あぁ、まだリザには話してなかったっけ?昔からある伝説らしいんだけど、

 最近、噂になってるの。時々怖いくらいに大きくて朱い月が出るでしょう?

 それをストロベリームーンって言うらしいの。で、それを一緒に見たカップルは

 お互いに引かれあって激しい恋に落ちるんだって。」

 

 

キャーという黄色い声を上げる友人。

確かに内容としてはロマンチックであり、彼女達が騒ぐ内容であるのはわかる。

しかし、あまりにもお伽噺過ぎるような気がしてならない。

 

 

「そう・・。でも、それって噂なんでしょう?」

 

「私もそう思っていたんだけど、案内係のあの子、分かる?あの子が先月、意中の彼と

 その月を見て見事恋人同士になれたそうよ。その他にも何人か成功してる人がいる

 みたいだし。不思議よねぇ?ってゆーか、羨ましい~!」

 

 

友人はそう言って机に突っ伏した。

なるほど、実例が何件かあるのか。それならば、そのうち他の同僚からも聞かされるかも

しれない。それにしても、本当にその手の話は彼女達からではないと聞けないことである。

 

自分自身にはそれほど関係ない事柄なのだが、彼女の上司はよく仕事をさぼって

女性とのデートに行ってしまう。その時彼には、一般的な女性は知っているが自分には

分からない言葉や単語、場所を言われ、彼女は彼を逃がしてしまったことがある。

もちろん後で、3日間徹夜をしてもらったが・・・

そんなことが起こらないように彼女はそれ以降、その手の話も覚えるようにしている。

なので彼女は今の話も記憶の片隅に留めておいた。

 

 

 

 

 

 

       +++

 

 

 

 

数日後―

 

 

 

 

P.M.7:00

 

書類とファイルを抱え、彼女は廊下を歩いている。

今日、彼女と彼女の上司は夜勤だったので1時間前に司令部へと出勤してきた。

彼女はここぞとばかりに彼に仕事をしてもらうために、出勤するとすぐに情報室へ

立ち寄り、そこでいくつかの溜まっていたセントラルからの書類の束を持ちだす。

そうしてこれからの業務の準備をして上司の待つ執務室へと急ぐ。

 

 

 

 

執務室へ向かう廊下にはいくつもの窓が設置されており、その途中、今日は特に澄み

わたった夜空を見ることが出来た。黒よりも少し淡い夜空にダイヤを散りばめたような

星空であったが、今夜は鋭く光る月は出ていない。

 

 

(今日は新月なのね。)

 

 

彼女はそう思いそのまま廊下を歩いていたが、ふと数日前に聞いた月の話を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ストロベリームーンを共に見たカップルはお互いに惹かれあい激しい恋に落ちる・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、それを教えてくれた友人は同じ職場にいる人物と見たいと言っていて。

そして、

 

 

『リザは、誰と見てみたい?・・・やっぱりマスタング大佐?』

 

 

と、話を振ってきた。

あの時の自分は確か・・・

 

 

『特にいない。それに大佐が恋人だと浮気ばかりされそうね。』

 

 

と、答えた気がしたが・・・ちゃんと考えて言っていたわけではなく。

 

 

 

 

(自分は誰と見たいのだろう・・・)

 

 

 

 

今、その月が出ているわけではないのだがひどく考えさせられている。

そのようなことは、今の自分には全く関係ないことであって。

それよりも早く、上司の元へと行かなければならないのに・・・

身体が思うように動かず、自然と足が止まり廊下に立ちつくした。

 

 

 

・・・そして、目をつむりその月を思い浮かべる。

 

 

 

いつもの仕事場。

いつもの軍服。

今日見たような夜空に、星。

そして、

普段の鋭い光を放つ月と同一には思えない色、形、大きさをしている朱い月。

それを、窓辺から見上げている自分。

 

 

 

 

そしてその隣には――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・。

 

目を開け、頭を振る。

そうして今、頭に思い浮かんできた人物の面影を散らす。

 

 

 

(馬鹿のことを考えたわ・・・)

 

 

 

 

今の自分は、守るべき人の為に動くのが信念であり、傍で守るために軍にいる。

その為なら引き金を引くのも躊躇わない。

だから当分、必要のないものに心を囚われてはいられないわけで・・・

何故なら、それは時として自分と守るべき人に牙をむけるものだから。

 

 

 

 

そう、その感情はいらない。今の自分には必要のないものだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は自分にそう言い聞かせ、再び廊下を執務室へ向け歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

そして、誰の姿もなくなってしまっている廊下の窓からは・・・

 

太陽から光を浴びていない月が彼女の背中を見つめ、自身の光で彼女を照らしていた。

立ち昇るような、蒼く儚い光で・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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