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ストロベリームーンを見た2人は激しい恋に落ちる。

そんな月夜の伝説がこのアメストリスの世界にあったとしたら、

そこにいる彼等はどんなことを思うのだろうか。

  

 Ⅰ Side:L

 Ⅱ Side:J

 Ⅲ Side:R

 Ⅳ Side:E



【注意】
これは赤石路代先生が描かれたストロベリームーンの設定が鋼の世界にあったとしたら・・・
と、いう妄想から派生したお話です。

ストロベリームーン

 

 

 

Side:E

 

 

 

 

 

走る、走る、走る――

 

 

彼は走った。ただひたすら、目的の場所を目指して・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       +++

 

 

 

 

 

ここを訪れたときのいつもの帰り道。

屋台で買い物をして弟と2人、今の下宿先に帰る途中に家と家の隙間から

朱い光を放つものが目に止まった。真円よりも少し欠けているそれは・・・朱い月。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつからだったか覚えていないが、彼は空に輝く月が好きだった。

金色に光っている所も、徐々に欠けていく姿も、再び満ちて元の円に戻る所も、

何もかも・・・

 

それを見ると月が自分に力を与えてくれているようで心が軽くなる気がした。

多分、それは月が自分を表しているように感じるからで・・・

金色は自分の髪。欠けた姿は今の姿。そして満ちて戻る姿が未来の自分。

 

月を見るたび、それがこれからの自分たちの旅の良い暗示を示してくれているようで

彼は夜空に輝く孤高の月が好きだった。

 

 

 

 

 

そして今は、彼との約束があったから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       +++

 

 

 

 

ある日の夜、久し振りに東方司令部に寄っていたら、アルフォンスが待つ下宿先へ

帰るのが遅くなってしまった。

急いで電話をして司令部から飛び出すと、いつもなら司令部の入り口までしか出て

こないロイが、珍しく家まで送ると言い出してきた。

 

エドワードはその時、ロイの申し出を聞いて心がはずむのを感じ、なんとか顔には

出さずにすんだが、嬉しくてたまらなかった。

 

けれども、その後に彼から続いて発せられた言葉は、

 

 

「夜道は危険だから。」

 

 

 

 

 

 

自分と彼がお互いに相手を想っていたことに気づいたのは、数ヶ月前。

その時のエドワードは心の高揚感を隠しきれず、けれど素直にもなれずにいたのだが、

相手のロイはさすがに大人であり、そんな彼を優しく抱き締めた。

 

しかし、お互いに果たす目的を持つ身であったため、恋人という立場に立てても以前

と変わらないスタンスを保つことにしており、その日は気持ちを確かめ合ってから初め

ての二人でいる時間だったのだが・・・

 

 

 

 

 

一緒に帰れるという事柄で簡単に浮かれてしまい、彼の自分を送る理由が自分の考えていた

ことと違ったというだけで、気持ちが沈んだのが分かったエドワードは、そんな自分自身に

腹立たしさを覚えてしまい、「いい!一人で帰れる!」と一言、声を荒立ててそのまま

走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走り、イーストシティを縦断するように流れる川に架る橋の上まで来ると、

さすがに息が切れ始め、立ち止まる。

その時になってようやく落ち着きが戻ってきて、彼を振り切って逃げてしまった事の

罪悪感や、自己嫌悪に襲われた。

 

 

「はは・・ったく、何やってんだろうな・・・オレ。」

 

 

恋は人を変えると言うが、まさか自分にもそれが当てはまるとは思ってもみなかった彼は、

深い深呼吸と共に、溜息もはき出す。

そのままそこに座り込みたい気持ちもあったが、宿には遅くなった自分を待つ弟がいる。

弟をこれ以上心配させるわけにはいかないので、すでに座り込みたくなっている身体を

叱咤して、むりやり起こしあげた。

と、その時、視界の端にきらきらと光るものの存在が目に入った。

 

 

「ん?・・・今のは・・・」

 

 

顔を上げて光があった方向を見ると、そこにはいつもよりひとまわり位は大きく見える

月が夜空に昇っていた。橋の周りには遮る建物などはなく、月は丁度川の上流に昇っていて

流れる川の水しぶきが、その月の光を受けてきらきらと輝いていたようである。

 

 

「おー。おっきいなぁ。」

 

 

久しぶりに見た大きな月。

引き寄せられたかのようにエドワードは橋の中央まで進み、橋から身を乗り出して月を

見上げた。その月は満月になる前のようで、僅かに欠けていて。

でも、少し落ち込んでいた今のエドワードには暖かい光を与えた。

 

いつから好きになったか覚えていないが、時々こうやって月を見ることが出来た時には

月の光を全身に浴びていた。

太陽の光を反射して光っている明かりだが、夜空には必要で。

そして、落ち込んだ時の自分にも必要なもの。

どんなに辛いことがあった後でもこの光に身を預けると、段々と心が落ち着いてきて、

その後、次に進むための気持ちを奮い立たせてくれる。

そんな月と今、遇えたことはエドワードにとって喜ばしい限りだった。

 

 

「久しぶりだけど、んー、やっぱ、気持ちいー。」

 

 

瞳を閉じて、深呼吸をして、月の光を逃さないように・・・

明日司令部に行って今日の事をロイに謝る為にも、今の心をスッキリさせたくて。

夜遅い事もあって人気は全くなく、弟が待っているから早く戻らねばならないことは

充分わかってはいたが、それでもエドワードは少しでも長く全身に光を浴びようとした。

月の光から力を貰いたかったから・・・

 

 

 

 

 

 

「よし。・・・帰るか!」

 

 

充分に光を身体に受けたエドワードは、そう言って乗り出していた身体を戻し、くるりと

方向転換をして歩き出そうとしたが・・・

しかし、その動きは目の前に立ちふさがっていたものにぶつかり叶わなかった。

 

 

「わふっっ」

「おっと、」

 

 

彼の前に立ちふさがっていたものはこの街で一番目にする蒼色で、ぶつかった時に聞こえた

その声は、少し前まで隣で聞こえていた声で。

 

 

「た、大佐!?」

「捕まえたよ、鋼の。」

 

 

そういって彼はエドワードを抱きしめる。

 

 

「な、なんでここに・・・」

「君が走って逃げるから、追いかけてきたんだよ。」

「それは・・・」

「なんで逃げたのかな?」

「いや、その前に放してって。」

「駄目だ。ちゃんと逃げた説明をしなさい。」

 

 

決して怒っている口調ではなくむしろいつもより優しく話すロイは、エドワードが彼から

逃げ出した理由なんて分かってはいたけれど、素直になれないエドワードがちゃんと理由を

話せるように、彼に質問を投げかける。

 

 

「・・・嬉しかったんだよ。」

「何に?」

「その・・・大佐が送ってくれるって言ったことが。でも、その、なんかオレが一人で

 その意味を勘違いしてたから・・・急にムカついて、それで・・・」

 

 

彼の胸元に顔を埋めたまま話すエドワードには、いつもの威勢の良さは無く。

そんな彼の頭を優しく撫でたロイは、クスリと微笑み、そしてゆっくりと彼を抱きしめて

いた腕をゆるめる。

 

 

「君は勘違いなどしていないよ。」

「だって、大佐は・・・」

「大人はね、本音を隠すものなのだよ。」

「え?」

「君以上に素直に言えないのが大人なんだ。」

「じゃあ・・・」

「出来るだけ長く君と一緒に居たかったから、送っていくと申し出たのだよ。」

「ははは・・・わっかんねーよ。」

 

 

泣き笑いに近い笑顔で悪態をつくエドワードの頬を撫で、柔らかく微笑むロイ。

そうしてもう一度、彼を自分の腕の中に包む。

 

 

「すまないね。」

「すまないじゃ、すまないってーの。」

「どうしたら、許してくれるかな?」

「・・・自分で考えろ。」

「ふむ・・・」

 

 

月の光を浴びていた時の気持ちは何処にいったのか。

ロイの腕の中に収まり安心してしまったエドワードは、その頃にはいつもの彼に

戻りつつあった。

 

 

「あぁ、いいことがある。」

「なに?」

「君はストロベリームーンの話を知っているかい?」

「・・・いいや、知らない。」

 

 

そう言って頭を振るエドワードにロイは、以前誰かから聞いたストロベリームーンの話を

聞かせた。

時々浮かぶ、朱く大きな月。それはストロベリームーンと呼ばれる月で、その月を一緒に

見ることが出来た二人は、激しい恋に落ちるといわれている。

 

 

「ふ~ん。なんか、女の人が好きそうな噂だな。」

「いつ出るか分からないし、早々好きな相手と見られるわけではないからね。

 そこら辺が女性にとってはロマンチックなのだろう。」

「で、その話が何?」

「君に約束しよう。私はその月を君と見る。」

「は?え・・・だって・・・」

「いつ出るか分からず、君と一緒の時に出るかも分からない月だが、私は君とその月を

 見るつもりだ。誰でもなく、君と。この意味、分かるかい?」

「それってつまり・・・」

 

 

激しい恋に落ちる相手はエドワードだと言われたのと同じ事で。

それが理解できた時、全身に熱が広がった気がした。

 

 

「それで、許してくれるかな?」

「あ・・・あぁ。」

「では、約束だ。場所はここで見よう。」

「ここ?」

「あぁ、ここからなら邪魔なものが無く綺麗に月が見られるからね。いいだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       +++

 

 

 

 

あの日はそう約束して帰り、その後しばらくはこの街を訪れることが出来なくて。

久しぶりに来られたその日の夜に、ちらりと見掛けた朱い色。

 

 

「兄さん?」

 

 

急に立ち止まったエドワードを不思議に思い、そう呼び掛けたアルフォンスだったが、

呼び掛けられた兄にはその声はこ届いていないようで。

 

 

「悪い、アル!先に帰っててくれ!」

「え!?ちょっと、兄さん?!」

 

 

エドワードはアルフォンスにそう叫ぶと荷物を放り出し、駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走っているときは、ただ約束したあの場所へ早く行かなければならないと思っていた。

しかし同時に、約束した彼も今、あの月が出ていることに気が付いているのかという、

不安も襲ってきた。

自分は外を歩いていたから気付いたが、相手の仕事は平常時なら室内に籠もりきりで、

ましてや緊急時なら月など見る暇もないくらい忙しく。

あの場所に着いても彼がいなかったら・・・期待が膨らんでいた分だけ沈むかもしれない。

 

 

でも・・・

 

 

それでもエドワードは走った。目的の場所を目指して…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋の上には朱い月だけが佇んでいて。

息を切らして走ってきた彼の影を濃く地面に焼き付ける。

 

 

いない・・・か。

 

 

現実はエドワードが少しだけ持っていた期待にすら甘くはないようで、彼の姿だけが

そこでは動いている。

 

 

「あー・・・はは。やっぱりな。」

 

 

走ってきた時に生まれた熱が一気に逃げていくのがわかる。

それは外の寒さが熱を奪っていくのか、体の中心が冷えているからなのか。

現実がいつも優しくないということを散々身に染みてきたはずなのに、心の何処かでは

期待をしてしまっていた、弱い自分がいて。

 

今度こそ、その場に座り込みたくなった。

 

 

しかし、その時・・・

 

 

「待っていたよ。」

 

 

と。

逃げようとしていた熱と共に、後ろから黒い影に抱きすくめられた。

その影は、エドワードがこの街に来たら何よりも聞きたいと思っている声と、いつも

自分に差し出してくれる暖かい腕を持っている人物で。

 

 

「え・・・なんで・・・」

 

 

居て欲しくないと思ったことはなかったが、彼が今この時に居てくれるという現実が

信じられなくて、エドワードは後ろに向き直ると、まじまじとその影=ロイを見つめた。

 

 

「ん?あぁ、そこの電話ボックスで暖をとっていたら、君が通り過ぎたからね。

 急いで出てきたのだよ。」

「暖!?・・・って、そうじゃなくて、どうしてわかった?仕事は!」

「そう一度に聞かれても、もっと落ち着きたまえ。今日はね、たまたま早く仕事が終わって。

 それで帰る途中に空を見たら、この月が見えたからそこで待っていたのだよ。」

「でも、オレがこの街に来ている事は知らなかっただろ?それなのになんで待って・・・」

 

 

そこまでするなんて、エドワードには思いも寄らなくて・・・その説明では、自分がこの街を

今日訪れていなかったら、帰り道に朱い月を見かけていなかったら、その約束自体を忘れて

しまっていたら、彼はこの夜をずっと待っていたことになる。

 

 

「そうだね。もしかしたら待ちぼうけを受けたかもしれない。」

「それなら・・・」

「だが、もしあの朱い月の話が本当なら私と結ばれる運命にある君は絶対来るだろうし、

 真実ではなかったとしても、私は信じていたから。」

「・・・何を?」

「自分の言った言葉を。・・・君とこの月を見ると。」

 

 

そして自分が激しい恋に落ちるのはエドワードと、だと。

自信満々でそう言いきったロイはエドワードに囁く。

 

 

 

 

「約束しただろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱い月が見ている前で

 

世界を少しだけ朱く染める光の前で

 

儀式の一つのように

 

腕の中にいたエドワードにキスを落として。

 

 

 

「さぁ、二人きりで見よう。」

 

 

 

そう言ってロイは笑った。

 

 

 

激しい恋に落ちた二人は、寄り添いながら朱く輝く月を見上げる。

この先にある二人の未来を祈って・・・

 

 

 

 



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