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ストロベリームーンを見た2人は激しい恋に落ちる。

そんな月夜の伝説がこのアメストリスの世界にあったとしたら、

そこにいる彼等はどんなことを思うのだろうか。

  

 Ⅰ Side:L

 Ⅱ Side:J

 Ⅲ Side:R

 Ⅳ Side:E



【注意】
これは赤石路代先生が描かれたストロベリームーンの設定が鋼の世界にあったとしたら・・・
と、いう妄想から派生したお話です。

 ストロベリームーン

 

 

 

Side:J

 

 

 

 

 

運命なんてものは信じちゃいない

 

伝説なんてものはありゃしない

 

まじないなんてくそくらえだ

 

未来は自分でつくるもの

 

それが信じられる道だった

 

あんなものは信じてなんかいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       +++

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジャン。ストロベリームーンって知ってる?」

 

 

3ヶ月前、やっとの事で自分に振り向いてくれて、付き合い始めた彼女に

そんな質問をされた。

 

 

「いや、知らないな。お菓子か何かか?」

 

「いゃぁねぇ、違うわよ。おまじない・・・というか、伝説ね。」

 

「伝説?」

 

「そう!」

 

 

彼女はにっこりと笑って話し始めた。

 

 

「あのね、いつもより大きくって朱い月が出ることがあるでしょう?それは昔から

 ストロベリームーンって言われている月で、その月を2人で見たカップルは激しい

 恋に落ち、何にも邪魔させずに結ばれるんだって。何か、運命的なものが動いている

 感じがする伝説よね。」

 

 

運命的・・・か。

 

自分の上司なら女性の前でスラリと言ってのける言葉だが・・・

あいにく俺は、運命なんてものを信じてはいない。

たまたま連続した偶然等をあたかも一つの道〈運命〉を辿っているが如く言われ、しかも

そのように感じさせられるからだ。

 

偶然は偶然。それ以上でも、それ以下でもない。ただそれだけのはず。

第一に、俺は何かしらの力に身を縛られるのは好きじゃない。

自分の進むべき道というものは自分で決めるものだ。

軍なんていう規律だらけの所に身を置いているのだって、自分の意志。

でなければこんな所になんて、人は居るべきじゃないのだから。

 

 

「・・・ジャン?」

 

「え?」

 

 

見ると彼女が首を傾げてこちらの顔を覗いている。どうやら自分は考えに集中していて、

彼女の言葉を上の空で聞いて居たらしい。

そのことを敏感に感じ取った彼女は、頬を膨らまし拗ねてしまった。

 

 

「もう!聞いてなかったでしょう!!」

 

 

起こっている姿もカワイイが、これ以上放っておくと後が大変なので俺はすぐに謝り、

彼女のご機嫌を直そうと軽く髪の毛を撫でた。

 

 

「ごめん!ちょっと考えちゃって・・で、その伝説がどうしたんだ?」

 

 

まだ拗ねている仕草をしていた彼女だが、口を尖らせながらも続きを話してくれた。

 

 

「だからね、この間友人に会った時、彼女、再来月に結婚をするって事を教えてくれたの。

 で、その相手というのが、実は伝説を実行して付き合い始めた人なんだって。そう言う

 理由で彼女はあの伝説は本物だったって言うの。だから・・・」

 

「だから?」

 

「私達も見たいねって言ったのに、聞いてくれてなかったんだもん。」

 

 

そっぽを向かれてしまった。まだ機嫌が直らないようだ。

まぁ、話を聞いていなかった俺が一方的に悪いので自業自得なのだが、せっかくの休みを

喧嘩なんかで終わらせたくはない。

 

 

「ごめんな。・・そうだな、じゃあ夜勤の無い時は夜のデートをしよう。」

 

「え?」

 

「月は夜出ているんだろ?だから2人で見れるまで夜は楽しくデート。」

 

「本当?」

 

「あぁ。」

 

「・・・・・」

 

「嫌か?」

 

「ううん、ぜ、絶対だよ!約束だよ。2人で見るんだからね!」

 

「ん、約束だ。だから・・さ、機嫌直してよ。」

 

 

 

 

 

伝説なんて信じてはいない。

しかし可愛い彼女が望んでいることだったし、ご機嫌を直してもらうことが何よりだった。

だから、あまり深く考えず約束をした。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       +++

 

 

 

 

 

3ヶ月後――現在

 

東方司令部で仕事を終え、夜勤の連中と挨拶を交わしそのまま更衣室へ入ると、もう

そこには誰もおらず、ひっそりとしていた。どうやら自分が最後らしい。

この後数時間は、この場所に人が入ってくることはない。

彼は部屋に設置してあるランプに火を灯した。

 

昼勤の者がこの時間に帰る理由は一つしかない。・・・残業である。

最も、これを押しつけていった自分の上司は、デートがあるとかで俺の同僚の止める声も

聞かずに、そそくさと帰っていった。

後で泣きを見るのに懲りない人だ。

 

まぁ、彼の部下の中で一番可愛がられている俺は、彼がただサボりたいが為に自分に

仕事
を押しつけていったわけではない事ぐらい分かっている。

・・・・・まぁ、推測の域は超えないが。

 

 

 

彼はおそらく知っているのだろう。2週間前に俺が彼女と別れたことを・・・

その事を考えさせないようにしてくれているのか、ただ単に嫌がらせ・・もとい、

構って
くれているのかは定かではないが、とりあえずここ最近の忙しさであの時のことを

考えず
には済んでいた。

 

 

 

彼女から別れを告げられたということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 

 

 

「ごめんなさい。」

 

「え?・・何が?」

 

「貴方とはもう付き合えないの。私・・・・」

 

 

2週間前、夜勤がしばらく重なり、中々彼女に会うことが出来ない日が続いてしまったの

だったが、その日は久し振りに夜のデートが出来た。

 

しかし、

 

俯きながらその言葉を口にした彼女。

そんな彼女を見つめていたが、その言葉が何を意味するのか、しばらく理解出来なかった。

 

 

 

その後の彼女との会話は朧気にしか覚えていない。 

 

 

 

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼い軍の制服を脱ぎ、更衣室内にあるベンチにそれを掛ける。そして自分もそこに座ると、

あの日の会話を思い出そうとした。

 

 

(確か、散歩が癖になったんだっけか?)

 

 

彼女は、彼が忙しくなって夜のデートが出来なくなっても、一人で散歩をするように

なった
と言っていた。今の季節なら夜に外出しても心地よく、暖かい。

どうやら夜の間、外を歩き回っていた為か家にいる方が寂しくなってしまったらしい。

 

 

その日も彼女は、彼が夜勤でいない淋しさを紛らわすように外へと出かけ、

街の中心に
ある噴水の前まで行ったという。

その時、偶然にも昔近くに住んでいた男の子(男性)が、十数年ぶりにこの街へ

戻って
きていて、噴水の前でバッタリと出会ったらしい。

久し振りの再会。

彼女は彼と噴水の縁に腰掛け、思い出話に花を咲かせたという。

 

 

 

ソイツは彼女の初恋の相手であったが、今だからこそ、そう笑って言ったらしい。

そうしたら、実はソイツも彼女のことが好きだった事が判明した。

話していく内に過去のほのかな暖かさと夜の暖かさが不思議と混ざり合い、あの時の

気持ちを強く感じさせたという。

 

 

偶然に偶然が重なり、意図せずにお互いの気持ちが高ぶるのを感じ、ふと目線を夜空に

向けると、まるで示し合わせたかのように半分欠けた朱い月、ストロベリームーンが

見えたそうだ。

 

 

 

その後はお互いが運命の相手だったと確信したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

(で、もう俺とは付き合えない・・・・か。)

 

 

煙草をポケットから取り出し、口にくわえ火を付けようとするが、ここが禁煙だった

のを思い出し、仕方なく元に戻す。

 

 

(なんでだろうな・・・・)

 

 

彼女は自分の力〈努力〉で手に入れたものだったはずだ。

だから手放せるはずもなく、もし別れることになってもこんなにもアッサリとは

ならないと思っていた。なのに、未だに信じられない位未練も、恨みもなく暮らせている。

・・・・・・。

 

 

 

 『誰にも邪魔をされずに結ばれる。』

 

 

 

 

・・・つまり、

 

これが、伝説の力だとでも言うのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・馬鹿馬鹿しい

 

 

 

そんなことあるかって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  だが・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・はは。情けねぇな、俺。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頬に熱く伝うものを感じたが、それが何であるかは認めたくなくて。

両手で顔を隠し、背もたれに寄りかかる。

 

運命なんて信じはしないし、伝説なんてあるわけがない。

自分で作った道のみが信じられる唯一のもの。

たとえ何かに阻まれようが、俺は俺が決めた通りに動いてやる。

 

 

そうは思っていても・・・

 

頬を伝うものが止まらない。

 

これはなんの為に流れているのか。

 

 

別れが悲しくて?

 

 

運命に阻まれて?

 

 

信じてしまったから?

 

 

信じられなくなって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・くそぅ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

彼はベンチからずり落ちると、そのままうずくまる。

しばらくは誰もやって来ないことが分かっている為か、立ち上がれそうにない。

しかし・・・このままじゃいけない事は、十分承知している。

 

でも・・・

 

あと、少しだけ過去に浸らせて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてしばらくうずくまっていた彼は、ゆっくりと立ち上がると、

着替えも漫ろにランプを消し部屋を出た。

 

 

ランプの明かりが消え誰も居なくなった薄暗い部屋には、窓からの月明かりが

遠慮がち
に差し込む。

彼のいた場所にはオレンジ色の淡い光があたり、そこに今まであった悲しい色をした

温もり
を光が優しく貰い受けているようだった。

 

 

 

 

 

 



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