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視点はアル。暗~い子に仕上がってます。

移行その⑰
以下は以前に書いたあとがき的なもの
 

 <あとがき>

はい、暗いです。

ロイエド←アルです。アルが恐いです。

これを自分の誕生日の深夜に書いていた藍原さんのその心理状態を覗いてみたいです。
1年以上も前に書かれた話なので、内容を確認しつつ修正をしていきましたが・・・

なんでこのような話が出来たのか・・・修正は「今はこれが精一杯(ル○ン口調)」です(疲)

(2004.1.2)
(2010.5 移行)

 

何かを犠牲にしなければ何も得ることが出来ないなら、

なんだってくれてやる。だから・・・

 

 


後悔

 

 

皆が寝静まった深夜。

年齢に似合わない大きな鎧の身体を持った少年が一人、

何年も使われていないであろう納屋にいた。

彼の右手には錬成陣を描く為のチョークが持たれ、左腕にはいくつかの薬瓶が抱えられている。

その中の一つには、こう書かれていた。

 

媚薬。

 

 

惚れ薬。なんていうと、うさんくさい物や紛い物が多いけど、中にはそれなりの効果があるものもある。

体温の上昇が見られ、意識が高揚する。

人は、相手を見たりそばにいたりしたときに意識の高揚などがみられると、思いこみで恋愛感情と認識

してしまったりするから、そういう効果があり且つ、それを使って相手に自分を意識させられれば十分、

惚れ薬になる。

キノコの一種に人にそういう効果を示す成分が含まれているものがあって、その成分を分離、精製した

ものが媚薬として売られていたりする。

 

 

僕の手に今あるのもその一つだけど、僕が欲しいのは惚れ薬じゃない。

僕が今、手入れたい薬は・・・忘れ薬。

それを使って忘れさせたい、ううん、無くしたいものがある。

 

 

それは兄さんの大佐に対する想い。

 

むしろ大佐そのものと言ってもいい。

 

 

 

母さんを失ってから、僕には兄さんしかいなくなった。

兄さんは僕を相棒としてくれた。そのことはとても嬉しかったけど、でも後から分かった。

それは兄さんの一番じゃない。

 

 

兄さんの一番は・・・マスタング大佐。

 

 

初めは、国家錬金術師になって賢者の石を見つければ、僕たちの身体を戻せるかもしれない。

と、いう道筋の一つに導いてくれた恩人の気持ちでいた兄さんだったけど、今は違う。

ずっと兄さんと一緒にいた僕には分かる。

兄さんは、大佐のことが好き。

いつもは悪態ばかりついているけど、そう言いながらも一瞬、嬉しそうな顔をするのを僕は見てし

まったから。

そして多分マスタング大佐も。

 

 

・・・・・・。

 

 

渡したくない。

 

僕にはもう兄さんしかいないから。そのためならどんなことだってやってやる。

だから、大佐の事は忘れて、兄さん・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

 

 

「はい。兄さん。」

「おぉ、さんきゅーアル。」

 

僕は兄さんにホットショコラを渡した。

牛乳嫌いの兄さんが、シチュー以外に牛乳入りでも飲めるものだから。

でも・・・今日のホットショコラには牛乳以外にも入っているものがある。

 

「今回の資料はどう?」

「あー、この人の文章ってさ、なんかおかしいんだよなぁ。暗号化してある部分がいくつかある感じ

 がするんだよ。」

「そっかぁ。じゃあ、図書館行く?」

「そーだなぁ・・・」

 

あえて僕はこう聞いた。でも、今日兄さんは大佐と約束があるのを知っている。

案の定、兄さんは約束を思い出したようだ。

 

「あ、悪りぃアル。 今日、大佐に借りる本を取りに行かないとなんだ。」

「じゃあ、急がないと。マスタング大佐の勤務時間って夕方までじゃないの?」

「あー!そうだった。読んでたらすっかり忘れてた!!これで遅れたらまたどーせ嫌味言われるん

 だぜ。『君の時計は壊れているのかね?いつも三時間やら五時間やら遅れるなんて。』、とか

 言ってさ。うわ~むかつく~!」

「はいはい。分かったから準備して。外は雨なんだから・・・」

「おぅ。」

 

そう言った兄さんは、カップに残っていたホットショコラを飲み干し、コートを取りに部屋に向かって

いった。僕が錬成で作った忘れ薬は、市販の惚れ薬と同じように効き始める。

時間は3分ぐらい。

その時に思い出した物を忘れるようになっている。

僕はさっきの飲み物に忘れ薬のほかに睡眠薬も入れておいた。

もし、効果が現れている間に大佐以外を考えないように・・・。

もうそろそろ効いてくるはず。

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

兄さんの入った部屋で物音がした。僕はそっと部屋を覗くと、兄さんががベッドに持たれ掛かる形で

倒れていた。

 

「あ・・・れ?なん・・・か、急に、眠くな・・・って、」

「大佐の所に行かないの?兄さん?」

 

僕は兄さんに声を掛ける。

きっと兄さんは大佐と言う言葉に反応するはずだから・・・。

予想通り兄さんはその単語に反応する。

 

「そう・・・だ、大佐の、取、に・・・お、遅れる・・・と、」

 

 

 

その言葉を最後に兄さんは僕が導いた深い眠りに堕ちていった。

 

 

 

 

僕は兄さんをベッドに寝かすと部屋の明かりを消す。

東方司令部に連絡はしない。

元々僕は司令部の外線の番号は知らないし、わざわざ知らせなくてもマスタング大佐のことだから

この雨の中、届けにくるか、明日にでも渡そうとするだろう。

でも僕の錬成は完璧だ。

明日になれば、兄さんは大佐のことなんて忘れている。

僕は、頬の動かない鎧の顔で嘲笑うと、後片付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

3時間後

 

 

 

 

窓を叩く雨の音が激しくなった頃、家のチャイムが鳴った。

たぶん、マスタング大佐だ。僕はドアに向かう。

 

「は~い。どなたですか?」

「私だ。ロイ・マスタングだ。アルフォンス君、鋼のは居るかい?」

「あ、マスタング大佐。雨の中ご苦労様です。兄さんは、いますけど・・・どうしたんですか?」

 

僕は約束があったことなど知らなかったように尋ねた。

 

「あぁ、鋼のに頼まれた本が届いたのでね。今日のお昼頃、取りにくるように連絡したのだが・・・

 来る気配が無くてね。私も時間まで待っっていたのが、連絡も無いし・・・どうしたのか思って尋ね

 てきたのだよ。」

「そうだったんですか。兄さんったら調べ物の最中にいつの間にか眠っちゃってて、さっき僕が

 部屋に運んだんです。雨だったし、予定はないと思っていたのですが・・・すみません。」

 

僕はそう嘘をつく。大佐はそんな僕にいつものように微笑むと、

 

「気にしなくていい。では、鋼のにこれを渡しておいてくれないか。それと、徹夜はほどほどに、

 とも伝えておいてくれ。」

 

と言った。

前にも兄さんは資料の解読で徹夜を続け、その後、大佐の呼び出しを受けたので司令部に向か

ったが、その途中の道で倒れ眠り込むという事件を起こしたことがある。

その時、ホークアイ中尉にはみっちり怒られ、大佐には笑われていた兄さんだったけど、どちらも

兄さんを本当に心配していたことを僕も兄さんもわかっていた。

大佐は兄さんを大人の立場で支えてくれている。兄さんも頼れる大人だということで接している。

そこまでの感情で終わっていれば・・・

 

 

 

「どうかしたのかい?」

 

僕からの返答がなかったので大佐は不思議に思ったのだろう。

首をかしげて鎧の顔を覗いてきた。僕は考えを押し殺し、丁重に挨拶をすませた。

 

「いえ、なんでもありません。これは兄さんに渡しておきます。 伝言も伝えておきますから。気を

 付けて帰ってくださいね。」

「あぁ。では、失礼するよ。」

 

 

 

 

・・・・・・。

 

ドアを閉めて、兄さんの眠っている部屋に行く。

兄さんは寝息を立てて眠っている。このまま朝までは、目覚めないだろう。

兄さんの机に渡された本を置くと、僕は兄さんの髪に手を伸ばす。

きつく結ばれているけれど滑らかに光るその金髪は、きっと、さらりとした感触があるのだろう。

鎧の僕には分からないことだけど・・・でも他の人には触らせたくない。

僕は髪の毛から手を離すと部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

エドワードは目を覚ます。

いつのまにか寝てしまったらしく服のままだった。

部屋を出ると、アルフォンスが食事の用意をしてくれていた。

 

「あ、兄さんおはよう。」

「おー、アルおはよ。どうやらこのまま眠っちゃったよ。」

「あはは。そうみたいだね。」

 

兄さんはテーブルに着くとハムエッグとチーズトーストを食べ始める。

 

・・・・・・。

 

完璧だ。

 

なんの違和感も感じずに、兄さんは大佐のことを忘れている。僕はコーヒーを渡すと、確認の

意味も含めて今日の予定を切り出す。

 

「今日はどうする兄さん。昨日言ってた本について調べる?」

 

『あぁ、そうだな。』と、そういう答が来ると思っていた。

 

しかし、

 

兄さんから紡ぎ出された言葉は、この後の僕を後悔に導くものだった。

 

 

「何言ってんだよ、アル。本なんか調べている暇なんて無いだろう?俺たちは俺たちをこんな身体

 にした犯人を捜し出して、そして母さんの・・母さんの敵を取らなきゃだろ?」

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

僕は耳を疑った。

 

 

兄さんの頭の中から僕たちの・・・僕たちが犯してしまった罪の記憶が消えてしまってい・・る?

 

 

 

な・・・・・ぜ・・・。本当に?

 

 

 

 

 

・・・・そう考えるより他にない。

兄さんの頭の中から大佐の記憶と、母さんを生き返らせようとして人体錬成した時の記憶が無くな

っている。そして埋め合わせるようにこの身体になった理由と、その犯人についての記憶が与えら

れているみたいだ。

 

・・・・・・何故? どうしてそんなことが・・・。

 

 

・・・・・・・。

 

 

 

理由は、すぐに思い立った。

あの時、大佐という言葉の他にもう一つ、兄さんが考えていた事がある。それは・・・人体錬成。

直接には本自体の事だけを考えていたのかもしれないけど、人の脳はそう簡単には出来てい

ない。多分兄さんは本の内容も思い浮かべてしまっていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・僕は、なんてことをしたんだ。

僕たちが生きている意味、辛くても共に前に進む原動力になる過去の罪を、僕は兄さんから奪って

しまった。

 

そして僕自身からも・・・

 

 

 

 

錬金術、強いてはこの世界の理は、何かを得るためにはそれと同等の代価が支払われなくてはなら

ない。僕は身をもって経験したはずなのに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また同じ過ちを繰り返してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・どうすればいい?どうしたら僕たちの罪を取り戻せる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、また何かを犠牲にしなければ何も、何も得ることが出来ないなら・・・

僕は、僕はなんだってくれてやる。この魂でさえも・・・。

 

 

だから―・・・。

 

 

 

 

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