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移行したもの。
持ち帰りフリーにしたけれど、そんな奇特な人がいたのかは不明。笑


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お読み頂きありがとうございます。
1000HIT記念のフリー配布ですので、ご自由にお持ち帰り下さいませ。
念のためですが、二次配布、文章の転用は禁止です。
(2006.01.19)
(2010.5.30 移行)



    ―冬のある日―




空はどこまでも澄みきっていて、幾重にも重ねられた青がひろがっていて。
地表には降り積もった白銀の雪が、太陽の光を反射させキラキラと輝いている。



そんな冬のある日のこと




    +++




「・・・寒い。」

白い吐息を吐きつつ、ぽつりとそんな一言を言った男は蒼い軍服と黒いコートに
身を包んでいる。身をすくめてコートの襟を締め直すと、今朝はまだ誰も踏み入れていない
大地へ一歩。
積もりきった、しかし、ふわふわとしている雪を踏みしめると、サクッと心地良い音が聞こえた。




昨日の夕方からしんしんと降り始めた粉雪は深夜になっても止む気配がなく、
翌朝まで降り続いた。
その為、昨日多くの人々は早々に帰宅し家の中で暖をとり、戸締まりをしっかりとして
明日に備えて一夜を過ごしていたであろう。

それはここ東方司令部で働く軍人にも同じ事が言える。
昨日が日勤の者は夜勤の者と交代すると直ぐに帰り支度をはじめていたし、夜勤の者は
しっかりと家の戸締まりをしてから出勤してきている。だが、ある程度地位のある人物になると
早朝出勤、残業、果ては泊まりがけで仕事をする者もいる。
先程、外へ出てきたロイ・マスタング大佐も例に漏れず、昨日は泊まりがけで残業をしていた。

もっとも、ロイの場合は普段からのさぼり癖が原因で、溜まりに溜まった決裁書類の提出に
追われていただけなのだが・・・
そんな彼が仕事を終えて帰宅することができたのは、雪の止んだ快晴の朝であった。





   +++




「昨日降ると知っていれば、あんなに溜めておかなかったのにな・・・」

いつもの帰り道、でも、白銀が拡がった雪を踏みしめて歩くロイは、そうつぶやく。
雪の量自体は、粉雪だったこともあり一晩中降り続いていても、10cmぐらいの積雪で。
歩くこと自体は困難ではなかったが丸一日書類とにらめっこをしていた身体には、雪の影響で
冷え切った空気が少しづつ体温を奪っていろようで、なかなかつらいものがある。
東方司令部から彼の家までは徒歩で20分ぐらいの道のりであったが、家の前に到着した時、
彼は寒さで震えていた。


「まず、部屋の中を暖めて・・・それから、風呂だな。そうしないと・・・眠れない。」

ドアに鍵を差し込みながら、これからすることを口に出す。
本当なら軍服を脱ぎ捨てて一目散にベッドへと直行したい所だが、昨日の早朝から無人だった
自分の家は夕方に降り始めた雪の対策は何一つされておらず、きっと外と同じぐらいに
冷え切っているはずだ。

そんな中で眠ってしまったら風邪をひくどころの話ではない。

下手をしたら、自宅で凍死することが出来る。

そのような死に方なんてしたら笑い者になることは明確で、
間違ってもそんな死に方はしたくない。
眠い目をこすり疲れた身体を動かしながらでも、部屋を暖めようと心に決めていたのだが・・・


「・・・?暖かい・・・」

ドアを開け玄関の中に入ると、明らかに外との温度差を感じた。
実際、室外と室内では温度差はあるだろうが、それでもこの暖かさはそれ以上である。

一瞬、昨日の朝に点けたままの暖房を消し忘れたのかとも思ったが、昨日は遅くなることを
見越して(泊まりがけになるとは思わなかったが、)しっかりと消したことを思い出した。

すると消し忘れではない。

何者かが押し入ったのかと警戒したが、鍵がこじ開けられていた形跡は無かったし
、窓ガラスを割って入ったのならそれこそここまで暖かくはないだろうし、
第一、いつまでも押し入った家に滞在するのもありえないだろう。



残る可能性は一つだけ。



ロイは急いで靴を脱ぎ捨てると、まっすぐリビングへと向かった。
そしてリビングのドアを開けると、そこには・・・





「・・よう、大佐。久しぶり。」
「・・・鋼の。」




部屋の中央に位置するオフホワイトのソファの上に、さも自分の家の如くくつろいでいる少年、
エドワード・エルリックの姿があった。

なぜエドワードが、ロイの家に居るのかというと・・・彼等は恋人同士だからである。


だが、彼等は恋人同士ではあっても逢瀬の機会はなかなか無く、逢ったとしてもすぐに
エドワードの方がまた旅へと出てしまう。

そんなエドワードに対してロイは、


『時間がある時は自分と一緒にいて欲しい。』


と、言ったことがある。

彼等兄弟の目的を考えれば自分のその願いはわがままであることは分かっていた。
しかし、だからといって恋人と何ヶ月もそばにいられずに過ごす事なんて自分には出来ない。
自分自身のことをそう認識しているロイはエドワードにそう懇願し、エドワードも苦笑しながら
了承してくれたのだった。

なのでロイは以前、ここの家の鍵をエドワードに渡した。

いつでもここに入れるようにと、又、いつかは必ず帰ってきてくれるようにと。



どうやら昨日のうちにエドワードはここへ来たようであった。


「来てくれていたのなら、連絡してくれれば良かったのに。」
「んー?連絡しようかと思ったけどさ、アンタのことだからまたサボって溜まった書類を
片づけてるのかと思ってやめておいたんだよ。」
「ひどいことを言うな、君は。」
「でも、実際はそうだったんだろ?」
「まぁ・・・仕上げてなかったら今頃は眉間に穴が開いていただろうね・・はは。」

誰に撃たれてとはエドワードも聞かなかった。
ロイと彼の部下とのやりとりはいつものことであったし、実際、彼の部下である副官の彼女が
威嚇射撃としてさぼり癖のある上司に発砲している現場を目撃している。

決して出来ないはずはないのに、ぎりぎりになるまで仕事をしない上司にはそれくらいやらないと
全くと言っていいほど作業効率の上昇が見込まれないかららしい。

それに関してはロイが全面的に悪いのでエドワードもロイも彼女の行いを責めることはなかったが。







「で、君はいつまでここにいられるのかい?」

コートと上着を脱ぎつつロイはエドワードに質問をする。
エドワードは、部屋にある壁掛けの時計を見て時間を確認した。

「14時発の切符を買ったから、それまでは居られるけど。」
「それだけしか居られないのか!?」
「まぁ、昨日一日ここにいたからな。」
「・・・そうか。残念だ。」
「アンタが残業しなきゃ、もう少し一緒に居られたんだけどな。」
「それを言われると・・・何も言えないな。」
「ま、沢山俺と逢う時間が欲しいならサボらず仕事しろって事だよ、大佐。」
「・・・肝に銘じておくよ。」
「あぁ。是非ともな。」


そう言ってにやりと笑ったエドワードの腕を取り引き寄せると、包み込むように彼を抱きしめる。
エドワードの方もそっとロイの背中に腕を回す。

「あぁ・・・君は暖かいな。」
「っていうか、大佐が冷たすぎるんだって!風呂入って身体暖めたら?」
「家に入る前はそれを考えたのだがね、君がいて、しかもあと数時間しか一緒に居られないなら
風呂に入っている時間が惜しい。」
「あ、そう。・・・でも、俺が冷たいんだけど。」
「・・・なら、一緒に暖まるかい?」
「はぁ?何、一緒に風呂に入るって?」


抱きしめられたままの状態から、エドワードは顔を上げ、ロイの顔を見る。
そんなエドワードを愛おしそうに見つめ、エドワードのおでこにキスを落とすと、ロイはこう言った。

「それも魅了的だが、あそこは狭いからね。手っ取り早く暖まれる方法は一つだよ。」
「それって・・・」
「君を抱きたい、エドワード。」
「・・・やっぱり。」


にっこりと微笑んで言うロイに苦笑いするエドワード。
更にロイはエドワードの左瞼左頬、そして唇にキスをすると、目線を合わせる為少しかがんだ。


「君を感じたいんだ・・・君の全てを。」
「・・・」
「駄目かい?」
「だめ・・・って言って聞くようなアンタじゃないからなぁ。」
「まぁ、そうだね。」
「なら、俺の答は一つしかないし。」
「それじゃ・・・」
「・・・しかたないな。・・・いいよ、大佐。」
「エドワード!」


エドワードの名前を呼んで破顔した彼は先程よりきつく抱きしめ、今度は啄むだけの
キスではなく、深く、濃厚なキスをする。

「・・ん・・っ・・」

いきなりのキス、しかも口内を荒く掻き乱されるそれにエドワードからはくぐもった吐息が漏れる。
何度も重ねては位置を変え、じっくりとエドワードを味わうロイ。
はじめは身を任せていたエドワードではあったが、激しすぎる口づけに呼吸が追いつかず、
ロイの胸をどんどんと叩きはじめた。

それでもなかなか彼を離そうとしないロイだったが胸を思い切り押され、名残惜しそうに
キスを終えた。


「はぁ・・はぁ・・い、いきなりがっつきすぎなんだよ!」
「すまない、なかなか抑えられなくってね。ここではなんだから・・・私のベッドへ行こう。」
「あぁ・・・でも、あんまりがっつくなよ。」
「・・・・・・」
「あん?返事は?」
「・・・努力はするよ、多分ね。」


そう言って2人はリビングを後にした。






おわり


 

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